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津田敏秀博士らの論文の方法の誤りを指摘したLetterが「Epidemiology」誌電子版に掲載されました

2016年2月 5日

福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センターの情報管理・統計室室長である高橋秀人教授を筆頭著者とする本学の教授8名のLetter(英語400字)が、2016年2月3日、疫学の学術誌「Epidemiology」の電子版に掲載されました。

このLetterは、2015年10月上旬に同誌の電子版に掲載された、津田敏秀博士らによる「Thyroid Cancer Detection by Ultrasound Among Residents Ages 18 Years and Younger in Fukushima, Japan: 2011 to 2014」と題する論文の解析手法の誤りを指摘したものです。当該学術誌では、掲載論文についての反駁(ばく)を受け付けるカテゴリーが英語400字のLetterであることから、解析の誤りの本質に焦点を絞りました。

津田博士らの論文では、福島県で実施している県民健康調査の甲状腺検査について、甲状腺がんの潜伏期間を4年間と仮定したうえで、福島県における甲状腺がんの罹患率が全国の罹患率と比較すると超過であり(例えば、中通りの中部の場合、50倍)これはスクリーニング効果で説明できるようなものではない、と述べられています。

この論文では、下記①と②の仮定が共に成立していることが前提になっております。

  1. 原発事故後に「全てのがんが甲状腺検査(がん健診)で発見できるまでに進展した」
  2. 「がん健診で発見されたがん」の全てが、4年間に臨床症状で発見されるまでに成長する(潜伏期間が4年)

この前提について、①に関しては、原発事故が起きる前にも、がん健診で発見できるまでに進展した甲状腺がんが存在した可能性があり、②に関しても、がんの進展(成長)が遅く、4年間では臨床症状(体調が悪くなる、声がかすれたり物を飲み込みづらかったりするなどの自覚症状がある、甲状腺の腫れが表面から分かる、など)が出て医療機関を受診し、その甲状腺がんが発見されるまでには進展しない可能性があります。実際甲状腺がんは一般的に進展が遅いということが知られており, 甲状腺がん以外の原因で亡くなった高齢者の解剖(剖検)をすると、甲状腺がんが見つかることが少なくありません。その甲状腺がんは、ご本人が亡くなるまで悪さをしなかった(=臨床症状が出なかった)ということになります。すなわち「4年で全てのがんが臨床症状で発見されるまでに成長する」というのは、実際とはかけ離れた仮定です。しかし、津田博士らは①②に関する二つの可能性を無視した解析をしています。

つまり、本論文の本質である、福島県の甲状腺がん罹患率や、その罹患率を用いた全国の罹患率との比較について、津田博士らの結果は、実際とはかけ離れた仮定を前提にして得たものですので、必然的に実際とは違っている(真の値を得ることができない)と考えられます。

津田博士らの論文には「この点で誤りがある」と指摘したのが、今回のLetterの内容です。

なお、甲状腺がんが健診で発見される状態になってからどれだけの期間が経過すれば、臨床症状が出て発見されるようになるのか(=潜伏期間)、については、まだ多くのことがわかっておらず、今後更なる研究が必要であると考えております。

Letterの概要
投稿誌Epidemiology
http://journals.lww.com/epidem/Pages/default.aspx
LetterタイトルRe: Thyroid Cancer Among Young People in Fukushima.
(投稿時のタイトルは下記)
Serious error in "Thyroid Cancer Detection by Ultrasound Among Residents Ages 18 Years and Younger in Fukushima, Japan: 2011 to 2014"
http://journals.lww.com/epidem/Citation/publishahead/Re___Thyroid_Cancer_Among_Young_People_in.99058.aspx
著者高橋秀人、大平哲也、安村誠司、大津留晶、ノレット・ケネス、谷川攻一、阿部正文、大戸斉

※全員、公立大学法人福島県立医科大学の教員であり、放射線医学県民健康管理センターの業務に携わっております。

オンライン掲載日2016年2月3日(電子版)

※)県民健康調査の甲状腺検査は、「検診」ではなく、健康の見守りに関する幅広い概念である「健診」の表記を用いているため、上記もこの表記に準じています。

2016年2月12日追記

1)上記「お知らせ」のLetterに関する説明資料(日本語、ファイル形式=PDF)を掲載しました。

Letterに関する説明資料Letterに関する説明資料はこちら

2)Epidemiology誌のウェブサイトには、上記で紹介した本学教員によるLetter以外にも、当該論文に関するLetterが複数、掲載されています。
当該論文の著者からの「Response to the Commentary by Professor Davis and the Seven Letters. -A well-known fact should be disseminated to remedy the problems.」と題する投稿も掲載されています。

▶ http://journals.lww.com/epidem/toc/9000/00000