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東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故後の精神的苦痛:2011年度および2012年度の「福島県民健康管理調査」によるこころの健康度・生活習慣に関する調査の結果 Psychological distress after The Great East Japan Earthquake and Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident: results of a mental health and lifestyle survey through The Fukushima Health Management Survey in FY2011 and FY2012

著者【筆頭著者】
矢部博興1,2,
【共同著者】
鈴木友理子3,4,、増子博文1,2,、中山洋子1,5,、久田満1,6,丹羽真一1,7, 安村誠司1,4,山下俊一1,8,、神谷研二1,9阿部正文1
1 放射線医学県民健康管理センター、 2 福島県立医科大学医学部神経精神医学講座、 3 国立精神・神経医療研究センター、 4 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、 5 高知県立大学看護学部、 6 上智大学総合人間科学部、 7 福島県立医科大学会津医療センター精神医学講座、 8 長崎大学原爆後障害医療研究所、 9 広島大学原爆放射線医科学研究所
掲載「Fukushima Journal of Medical Science」(2014. 6月号)

【背景】
2011年3月11日、東日本大震災に続き、巨大な津波が日本の東北地方の太平洋岸を襲い、東京電力の福島第一原子力発電所を破壊し、福島県全域に放射線災害をもたらしました。福島県の居住者における外部および内部被爆放射線量は、これまでのところ、いずれも低いものと評価されており、それらが身体的状態に直接的な放射線リスクを生じさせる可能性はほとんどないと考えられています。したがって、本報告の目的は、複雑な本事故の後に精神衛生上の問題を生じるリスクがより高い居住者に対する適切なケアを提供することを意図した「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の結果を記述することです。

【参加者および方法】
本調査の対象母集団は、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、南相馬市、田村市、川俣町の山木屋地区、および飯舘村を含む避難区域の居住者です。対象母集団は、2011年度において210,189人、2012年度において211,615人でした。本災害の10か月後および22か月後の2012年1月、続いて2013年1月から調査票が郵送されました。対象者のうち、2011年度では子供の63.4%、成人の40.7%、2012年度では子供の41.0%、成人の29.7%に郵送された調査票に回答しました。

【結果】
社会人口統計学的データは、大惨事後に多くの避難者世帯が家族離散を経験し、何度も避難場所を変えなければならなかったことを示していました。

本調査では、全般的な精神健康状態を推定するためにK6が使用されました。全般的な精神健康状態に関し、K6のカットオフ値以上のスコア(13点以上)を示した成人の割合(2011年度では14.6%、および2012年度では11.9%)は通常より高く、避難者に深刻な精神健康上の問題があることを示唆しています。

トラウマ反応を反映するPTSDチェックリスト(PCL)のカットオフ値以上のスコア(44点以上)を示した成人の割合(2011年度では21.6%、および2012年度では18.3%)は、米国における世界貿易センタービル爆破事件後の作業員のものとほぼ同等でした。これらの結果もまた、避難者が深刻な心的外傷を負っていることを示唆しています。

子供における精神健康状態を反映する「子供の強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire)」(SDQ)のカットオフ値以上のスコア(16点以上)を示した子供(4~6歳)と小学生年齢の子供(6~12歳)の割合は、2011年度の調査では24.4%と22.0%であり、それぞれ、通常の状態の2倍でしたが、2012年度での4~6歳の子供における16.6%および6~12歳における15.8%は、1.5倍でした。これらの所見は、年毎に相対的に改善されてはいるものの、子供に深刻な精神的困難さが存在することを示しています。

【結論】
今回のこころの健康度調査が示すように、地震と津波、その後に起こった原子力発電所事故は、福島県民に精神的苦痛を引き起こしました。継続的な調査およびメンタルヘルスケアのプログラムが必要と考えられます。