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原子力災害と健康:その教訓、課題、そして提言 From Hiroshima and Nagasaki to Fukushima 3
Nuclear disasters and health : Lessons learned, challenges, and proposals

著者【筆頭著者、連絡・責任著者】
福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座:大津留晶
【共同著者】
谷川攻一、熊谷敦史、丹羽大貫、高村昇、緑川早苗、Kenneth Nollet、
山下俊一、大戸斉、Rethy K Chhem、Mike Clarke
掲載「Lancet」(2015)

広島・長崎の原爆被災においても、過去の大規模な原子力発電所の事故においても、これまで人類が経験した原子力災害は、放射線災害の潜在的な健康影響における類似性が浮き彫りとなってきています。そこには、放射線の直接影響ではない問題が重要な要点として含まれます。原子力災害自体は比較的まれな事象であり、根拠に基づく介入と戦略を検討する機会は限られています。

しかしながらこれまで学んだ教訓から、一般の人々を保護し、原子力災害の悪影響を最小限に抑え、高線量放射線被ばくから緊急作業員を保護するための効果的な計画を立てることは肝要です。さらに、災害時に入院している患者およびその他の災害弱者に対し、避難や避難後の災害関連死をできるだけ回避するためにも、初動時の政策決定を支援する研究が必要とされます。

原子力災害は何十万人もの人々が身体的および精神的な影響を受ける危険性があります。そのため原子力災害後の復興期の間、避難の経験を持つ住人が数多く含まれる被災地の居住者に対し、医師は通常の医療に加え、全般的な身体・精神健康を維持するための支援を提供する必要があると考えられます。それは疾患予防策の一つとして災害後の環境放射線防護を説明するだけでなく、個別のリスクを個人の生き方に合わせてコミュニケーションすることが課題となります。

原子力災害後の多様な対象者に対し、個人の生き方や幸せに基づいた健康の維持を目的として、リスク伝達の難しさを克服し、政策決定を支援するためにも、医師・医療関係者と保健に携わる人は原子力災害対応の訓練を受けるべきでしょう。この訓練は、科学的な不確実性を考慮しつつ、できるだけ根拠に基づく健康への介入となるべきで、潜在的な有害性と有益性のバランスを取って、地域の合意形成においても、個人の判断においても、それらを支援できる人材育成が望まれます。将来の原子力災害や複合災害に備え、その健康影響を最小限に抑えるために、医療者に対するこれらの教育・訓練の学習過程が広く共有されることが今後不可欠です。