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放射線災害後の福島で:対話を形作る(letter) After Fukushima: Creating a dialogue(letter)

著者【筆頭著者】
福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座:宮崎真
【連絡・責任著者】
福島県立医科大学ふくしま国際医療科学センター:谷川攻一
【共同著者】
福島県立医科大学医学部健康リスクコミュニケーション学講座:村上道夫
掲載「Science」(2016)

東京電力福島第一原子力発電所事故から5年が過ぎようとしている。事故により生じた追加被ばく線量は結果的に少なかったことは明らかになりつつあるが、2016年3月4日号のサイエンス誌に掲載された「Epidemic of fear(不安の流行)」という記事を初めとする他の健康問題に関する報告にあるように、放射線への不安を払拭することは困難である。この懸念に対処するために、私たちは住民と医療者の間の理解を深めるための取り組みを進めてきた。

私たちはまず、大学に所属する医療者と避難住民との間を繋ぐことを目的に、500回を超える「よろず健康相談」を開催し今も継続している。医療者は、住民それぞれの持つ症状と健康への懸念にどう対応するかを住民とともに考え、健康増進や病気予防のためのセルフケアを支援してきた。これらの対面相談サービスが、懸念を払拭するお手伝いになることを目指している。

一方、学外の医療者や放射線防護の専門家は、住民との対話を開き、対話を維持するためのセミナーを多く開催してきた。多様な汚染状況を有する伊達市は、対話セミナーの場で共有された知見・経験を生かし、個人被ばく線量の実測を継続するとともに個人に直接説明を行う人員をいち早く配置したり、参加者を少人数に絞って心身両面のケアを行うプロジェクトを拡充したりするなど、実際の行政の施策改善にフィードバックしている。これらの活動には、住民の傍に立つ専門家の助言が生かされている。このように住民と行政の間に立つ「リエゾン」の役割を演じる医療者や専門家の存在は、放射線リスクに関する一方的な知識伝達に陥りがちなコミュニケーションを、住民の多様なニーズに応じた双方向の生きた対話に変革させた。

福島県では避難区域の解除とともに、徐々に住民の帰還が始まっている。帰還が進むにつれて、放射線や新たな環境での生活への不安が生まれつつある。医療者や専門家はこれまでの経験を生かしつつ、総合的な保健サービスの構築とコミュニティとの対話を進め、帰還住民のニーズに応じたサポートを継続していくべきである。