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福島第一原子力発電所の事故によって生じた避難区域における避難生活者の深刻な心理的苦痛:福島県民健康調査 Severe Psychological Distress of Evacuees in Evacuation Zone Caused by the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident: The Fukushima Health Management Survey

著者【筆頭著者】
福島県立医科大学医学部神経精神医学講座:國井泰人
【共同著者】
鈴木友理子、志賀哲也、矢部博興、安村誠司、
前田正治、丹羽真一、大津留晶、増子博文、阿部正文
掲載「PLOS ONE」(2016)

【背景】
2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれに続く津波によって、福島第一原子力発電所の事故が生じたため、長期的に放射性物質飛散が継続する未曾有の原子力災害を引き起こし、避難区域の住民の精神衛生状態に影響を及ぼし続けています。過去の原子力災害をみると、チェルノブイリ原発事故の健康への長期的影響として、心身における変調が主要な問題のひとつとして指摘されています。すなわち、被ばく地域の住民においては、放射線に対する不安、説明のつかない身体症状、主観的な健康不安などが見られました。
今回の災害後にも、WHOはメンタルヘルスを主要な課題として挙げています。そこで、私たちは原子力発電所事故後の避難生活者の精神衛生状態を調査するため、継続中の福島県民健康調査の一環として、こころの健康度・生活習慣に関する調査を実施しました。

【手法】
ケスラー6項目心理的苦痛スケール(K6)を用いて、福島県の避難区域内に住んでいた15歳以上の避難生活者合計73,569名(回答率:40.7%)の精神衛生状態を測定しました。次に、K6の12/13カットオフを用いて回答者を二分し、人口動態情報、社会経済変数、および災害関連変数を含む各リスク要因に占めるK6スコアの13点以上と12点以下の割合を比較しました。また、カイ二乗検定を用いて精神衛生状態と考えられる危険因子との間の二変量解析も実施しました。さらに、修正ポアソン回帰モデルを用いた多変量回帰分析も行いました。

【結果】
K6スコアの中央値は5(四分位範囲:1-10)でした。心理的苦痛の件数は8,717件(14.6%)でした。災害関連リスク因子を含む、ほとんどすべての調査項目について、心理的苦痛の有病率に有意な差が見られました。そのほとんどが、有病割合(PR)の増加を伴うものでした。さらに、各避難区域における心理的苦痛は、それぞれの環境での放射能レベルと有意に正の相関があることが判明しました(r = 0.768, p = 0.002)。

【結論】
地震、津波およびその後の原子力発電所の事故は、福島県の避難区域の住民の精神衛生状態に深刻な影響を及ぼした可能性が高いと思われます。心理的苦痛と放射能レベルとの密接な関連性は、原子力発電所の事故が住民の精神的健康に深刻な影響を及ぼし、これがリスク認識の増大によってさらに悪化した可能性があることを物語っています。今後も避難生活者の精神状態の悪化によるうつ病の発症や、それの基づく自殺企図等による震災関連死を未然に防ぐためには迅速かつ適切な支援を行う必要があり、医療機関や行政が一体となった避難生活者への継続的な心理社会的介入が強く推奨されます。