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福島第一原子力発電所事故後の外部被ばく線量に基づく3地域における小児甲状腺がん有病率の比較:福島県県民健康調査 Comparison of childhood thyroid cancer prevalence among 3 areas based on external radiation dose after the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident: The Fukushima health management survey

著者【筆頭著者、連絡・責任著者】
大平哲也1,2
【共同著者】
高橋秀人1、安村誠司1,3、大津留晶1,4、緑川早苗1,4、鈴木悟1,5
福島俊彦1,5、志村浩己1,6、石川徹夫1,7、坂井晃1,8、山下俊一1,9、谷川攻一1
大戸斉1、阿部正文1、鈴木眞一5、福島県「県民健康調査」グループ
1 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、2 福島県立医科大学医学部疫学講座、3 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、4 福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座、5 福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座、6 福島県立医科大学医学部臨床検査医学講座、7 福島県立医科大学医学部放射線物理化学講座、8 福島県立医科大学医学部放射線生命科学講座、9 長崎大学原爆後障害医療研究所
掲載「Medicine」(2016)

2011年3月11日に東日本大震災が発生し、その後、福島第一原子力発電所の原子力事故が起こりました。放射線と甲状腺がんとの関連は既に多数報告されていることから、今回、放射線事故後の外部被ばく線量と小児甲状腺がん有病率との関連を検討しました。

福島県県民健康調査の先行検査(2011年10月~2015年6月)を受診された18歳以下の男女30万476人を対象として横断的に調査を行いました。県民健康調査における基本調査の個人の外部被ばく線量の結果をもとに、福島県を3つの地域(外部被ばく線量が5ミリシーベルト以上の方が1%以上いる地域:グループA、外部被ばく線量が1ミリシーベルト以下の方が99.9%以上の地域:グループC、それ以外の地域:グループB)に分けた上で、最も線量が低い地域(グループC)に対する甲状腺がんの有病率を性、年齢を調整したうえでロジスティック分析によりオッズ比(危険度)を算出しました。

同様に内部被ばく線量が考慮されたWHO(世界保健機関)の被ばく線量分析の結果に基づいて分類した3地域でもオッズ比を算出しました。さらに、甲状腺検査と基本調査を共に受けられた12万9321人について、個人の外部被ばく線量と甲状腺がん有病率との関連を分析しました。

甲状腺がんの有病率を地域別にみると、最も線量が高いグループAでは10万人あたり48、グループBでは10万人あたり36、最も低いグループCでは10万人あたり41でした。グループCに比べた甲状腺がんを有することの性、年齢調整オッズ比はグループAで1.49 (95%信頼区間:0.36-6.23) 、グループBで1.00 (95%信頼区間:0.67-1.50)であり、甲状腺がん有病率に地域差はみられませんでした。同様に、WHOの推計値に基づいた地域分類と甲状腺がん有病率との関連についても有意な関連はみられませんでした。

また、原子力発電所事故から甲状腺検査までの期間と甲状腺がん有病率との関連を全体および地域別に検討したところ、検査までの期間と甲状腺がん有病率との間には関連はみられませんでした。さらに、個人の外部被ばく線量と甲状腺がん有病率との関連を検討した結果、外部被ばく線量が1ミリシーベルト未満、1ミリシーベルト以上2ミリシーベルト未満、2ミリシーベルト以上における甲状腺がんの割合はそれぞれ0.05%、0.04%、0.01%でした。外部被ばく線量が1mSV未満の人に対する、1ミリシーベルト以上2ミリシーベルト未満、2ミリシーベルト以上の人の甲状腺がんを有することの性、年齢調整オッズは、それぞれ0.76(95%信頼区間:0.43-1.35)、0.24(95%信頼区間:0.03-1.74)であり、個人の外部被ばく線量と甲状腺がん有病率との関連はみられませんでした。

以上の結果より、福島県における震災後4年間にわたる調査において、外部被ばく線量と甲状腺がん有病率との有意な関連はみられませんでした。今後、追跡調査によってさらに検討する必要があります。



論文の掲載URL

▶ http://journals.lww.com/md-journal/Fulltext/2016/08300/Comparison_of_childhood_thyroid_cancer_prevalence.15.aspx