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著者らによる回答 The Authors Respond

著者【筆頭著者、連絡・責任著者】
放射線医学県民健康管理センター:高橋秀人
【共同著者】
大平哲也、大津留晶、志村浩己、坪井久美子、安村誠司、
谷川攻一、緑川早苗、鈴木悟
掲載「Epidemiology」(2017)

津田教授らの論文に対する方法論の問題点を指摘した私たちのレターに対し、濱岡教授から、結節の成長率は早いという彼の推論に基づいて、4年間の潜在期間は合理的であるという指摘がありました。
濱岡教授の論拠は、(1)1巡目の検査(先行検査)と2巡目の検査(本格検査1回目)の間の最小期間(7ヶ月)に最大径が17.3mmとなる4症例が見つかったことから、 最速の成長速度は17.3/7月(=29.1mm/年)であったであろうということ、(2)診断による誤分類は少ないであろうということ、および(3)平均腫瘍径の減少は放射線の影響を示していると考えられる、というのは、年齢とともに腫瘍径は増大するにも関わらず、調査地区は放射線曝露レベルが高い方から低い方へという順番になっているからである、ということ、の3点です。

しかしながら(1)の指摘について、彼の論拠に2つの本質的な問題があります。第一は、本質的に発見能力すなわち腫瘍径は検査特性に依存している点です。甲状腺がんの発見は、 微小石灰化や結節内血流、境界不明瞭、不完全エコー、縦横比>1、や結節の大きさの拡大に基づいています。言いかえると、悪性は、たとえサイズが5mmより大だとしても、例えばマージンが不明瞭、不十分な円、等弾力、血流量が少ない像であれば検出されません。ゆえに検出されないサイズを0mmと仮定することは正しくありません。

第2に、不十分な情報(1点のみのデータであり、時間間隔の粗い推定です)を用いて成長率を推定することは実行可能ではありません。濱岡教授は、われわれの検討委員会用の報告書から最大値と最速値を見つけていますが、この報告書には個人単位のデータは含まれておらず、 また初めの検査日も記載されていません。濱岡教授は1巡目の検査日や結節の大きさを知ることなく最速の成長率を推定しているのです。

(2)の指摘について、われわれの結果は甲状腺疾患の複数の専門家により、できるだけ確かになるように確認していただいています。しかし一方で検査結果は器具の性能に依存しています。

(3)の指摘について、濱岡教授は放射線の影響を平均腫瘍径が(時間とともに増大するにもかかわらず)、調査地区の順番(放射線レベルが高いから低いという地域相関研究の枠組み)に起因するものであると結論づけました。疫学研究者ではよく知られているように、地域相関研究ではアーチファクトを排除する点に気をつけなければなりません。

加えて、濱岡教授は自身の推論の中で、悪性患者の人数が小さい点を考慮した平均腫瘍径の変動を考えていません。一般に小標本においては、極端な値がサンプルに混入すれば、代表値は平均と必ずしも一致しません。第17回と第18回の報告における症例数、4、8という値は、第19回の報告での15、25、39、51とは違い、1ケタです。もし、われわれが第17回、第18回の1ケタの数における平均の代表性を疑って第19回とそれ以降の代表値に限った場合、表における腫瘍径と年齢はともに増加し、これは濱岡教授の論理に矛盾します。データにおいてより注意深い考察が必要です。