「県民健康調査」の情報をご提供するサイトです






福島第一原子力発電所事故後の高齢者における日常生活の自立度と全般的精神健康との関連 :福島県県民健康調査 The Relationship Between Functional Independence and Psychological Distress in Elderly Adults Following the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident : The Fukushima Health Management Survey

著者【筆頭著者、連絡・責任著者】
放射線医学県民健康管理センター:針金まゆみ
【共同著者】
国立精神・神経医療研究センター:鈴木友理子
福島県立医科大学:安村誠司、大平哲也、矢部博興、前田正治
福島県病院局:阿部正文
福島県「県民健康調査」こころの健康度・生活習慣に関する調査グループ
掲載「Asia Pacific Journal of Public Health」(2017)

【背景】
災害後の避難生活は、こころの健康度を悪化させる可能性があるといわれています。特に高齢者において、若年者よりその可能性が高いといわれてきています。一方で、高齢者の健康について論じる際には、日常生活における自立度を考慮する必要があるともいわれています。そのため、避難生活を送る高齢者のこころの健康度は、日常生活の自立度によって違うのではないかと考えました。そこで、私たちは、東日本大震災に伴う東京電力第一原子力発電所事故のために避難を余儀なくされた高齢者の日常生活の自立度とこころの健康度との関係を検討しました。

【方法】
福島県「県民健康調査」の詳細調査「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の一部を使用して分析しました。この調査は、国により避難指示区域とされた市町村に居住していた方を対象として、平成24年1月以降、毎年実施している調査です。本報告では、この対象のうち、65歳以上の5万3220人を対象とし、平成24年10月までに本人が回答し、こころの健康度に関するスケールに回答していた1万7092人について分析しました。日常生活の自立度は、食事、更衣、排泄、買物が一人でできるかを尋ね、こころの健康度は、Kesslerが開発したK6というスケールで尋ねました。日常生活の自立度が低い方のこころの健康度が低い可能性について、社会経済的要因と被災関連要因を調整して、多重ロジスティック回帰分析によりオッズ比(危険度)を算出しました。

【結果】
分析の結果、高齢者では、日常生活の自立度とこころの健康度に有意な関連がみられ、日常生活の自立度が低い人は高い人に比べて、2.32倍こころの健康度が低くなっていました(オッズ比:2.32;95%信頼区間:1.97, 2.73)。また、それに加えて、避難所や仮設住宅に暮らしていること、県外に住んでいること、津波を体験したこと、原子力発電所事故を体験した(爆発音を聞いた)こと、死別を体験したことなどの震災に関係した要因も、こころの健康度が低いことと関連していました。

【結論】
以上の結果から、災害により避難を余儀なくされた高齢者において、日常生活の自立度が低い場合には、こころの健康度が良好ではない可能性が高いことが示されました。そのため、災害後に避難を余儀なくされた高齢者について、「高齢者」とひとくくりにせず、日常生活の自立度を考慮したうえで支援を提供することで、より適切な支援につながる可能性が示唆されました。