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第16章 福島県民健康調査甲状腺検査の心理社会的影響 Chapter 16 – Psychosocial Impact of the Thyroid Examination of the Fukushima Health Management Survey

著者【筆頭著者、連絡・責任著者】
緑川早苗1
【共同著者】
大津留晶1、鈴木悟1、谷川攻一1、大戸斉1、阿部正文1、神谷研二1,2
1 福島県立医科大学、2 広島大学
掲載「Thyroid Cancer and Nuclear Accidents: Long-term Afftereffects of Chernobyl and Fukushima」(2017)

福島県民健康調査の甲状腺検査は、2011年の複合災害の後の混乱した状況のため、十分な準備を行うことができない中で開始されました。5年を経過し、甲状腺超音波検査に関連した様々な心理社会的影響が指摘されています。受診者とその家族は甲状腺検査の結果と放射線被ばくを関連付けて考えがちであり、そのことが甲状腺がんに関する新たな懸念となっています。

甲状腺がんスクリーニングは、甲状腺がんは予後が良いことと過剰診断のリスクが高いことから、一般的には国際的にも推奨されていません。我々は甲状腺検査のプログラムをスクリーニングの原則から考え、さらに原発事故後という特殊な状況で始まったことを踏まえて検討しました。甲状腺検査のプログラムは一般的な疾患のスクリーニングの原則に適合しておらず、現状ではメリットとデメリットのバランスが取れていないと考えられました。

よって、甲状腺検査の心理社会的影響への取り組みとして、説明会や出前授業、個別の説明を行いました。これらの取り組みは本スクリーニングに必須のものではありますが、まだ十分ではありません。甲状腺がんスクリーニングのデメリットとそれに伴うマイナスの経験をさらに減らすため、より包括的なプログラムの改善が必要であると思われます。