「県民健康調査」の情報をご提供するサイトです






福島の教訓:福島原発事故後の甲状腺がんに関する最新知見 Lessons from Fukushima:Latest Findings of Thyroid Cancer After the Fukushima Nuclear Power Plant Accident

著者【筆頭著者、連絡・責任著者】
山下俊一1,2,3
【共同著者】
鈴木眞一4、鈴木悟1、志村浩己5、Vladimir Saenko 3
1 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、2 長崎大学原爆後障害医療研究所放射線リスク制御部門放射線災害医療学研究分野、3 長崎大学原爆後障害医療研究所放射線リスク制御部門放射線分子疫学研究分野、4 福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座、5 福島県立医科大学医学部臨床検査医学講座
掲載「Thyroid」(2017)

原発事故後の健康影響の可能性として、放射線被ばくにより惹起される晩発性甲状腺がんの発症リスクの増加がありますが、主として放射性降下物に含まれる放射性ヨウ素の放出に起因すると考えられています。特に、幼少期から青年期の間での被ばくによりそのリスクが高くなります。

被ばくによる甲状腺がんの増加や発症リスクを評価するためには、疫学調査研究の情報収集と解析がとりわけ重要となり、放射線生物学と分子遺伝学を十分考慮する必要があります。この観点からは、被ばく線量依存的な発癌リスク、甲状腺癌発症の時間的な経過、病理組織学的な特徴、そして検出される遺伝子異常の背景などが重要です。しかしながら、発見された甲状腺がんの原因を、放射性起因性か自然発症であるのかを鑑別診断することは困難あるいは不可能に近いです。なぜなら遺伝子レベルでの放射線痕跡や被ばくの生物マーカー、あるいは放射線誘発がんに特異的な遺伝子マーカーが確立されていないためです。

このような状況下で、福島県においては約30万人の固定集団を対象に検査が繰り返され、すでに116例と71例の若年期甲状腺がんが、それぞれ第一、第二回の甲状腺超音波検査によって発見されています。その結果、県民には甲状腺がんが東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故に起因するのではないかとの不安が広がっています。

本総説では、小児甲状腺がんと放射線の関係について、甲状腺がんの発症分子機構の基礎データも含めて、国際機関や著者自身とその他の科学論文を中心に概説しています。さらに福島県で手術された甲状腺がんの臨床データを紹介し、甲状腺超音波検査の効果についても議論しています。福島における甲状腺がんについては、放射線との関係も含めて正しく問題点を理解することが必要不可欠です。