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東日本大震災後の避難生活と高血圧症のリスク:福島県県民健康調査 Evacuation and Risk of Hypertension After the Great East Japan Earthquake: The Fukushima Health Management Survey

著者【筆頭著者、連絡・責任著者】
大平哲也1,2
【共同著者】
細矢光亮1,3、安村誠司1,4、佐藤博亮1,5、鈴木均1,6、坂井晃1,7、大津留晶1,8
川崎幸彦1,3、高橋敦史1,9、小笹晃太郎10、小橋元11、橋本重厚1,12
神谷研二1,13、山下俊一1,14、阿部正文1
1 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、2 福島県立医科大学医学部疫学講座、3 福島県立医科大学医学部小児科学講座、4 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、5 順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌学、6 福島県立医科大学医学部循環器内科学講座、7 福島県立医科大学放射線生命科学講座、8 福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座、9 福島県立医科大学医学部消化器内科学講座、10 放射線影響研究所疫学部、11 獨協医科大学公衆衛生学講座、12 福島県立医科大学会津医療センター糖尿病・内分泌代謝・腎臓内科、13 広島大学原爆放射線医科学研究所、14 長崎大学原爆後障害医療研究所放射線リスク制御部門
掲載「Hypertension」(2016)

【目的】
福島県では、2011年3月11日に東日本大震災が発生し、その後の福島第一原子力発電所の放射線事故により多くの人が避難を余儀なくされました。避難者では生活習慣の変化が起こっている可能性が高いため、本研究では、避難が震災後の高血圧発症のリスクを高くするという仮説の検証を行いました。

【方法】
避難区域13市町村の40歳から74歳の地域住民の方のうち、2008年から2010年の間に特定健診を受診した男女31,252人を対象としました。対象者のうち、震災後の2011年から2013年の間に再度健診を受診した男女21,989人(追跡率70.4%)を解析対象者として、避難と震災後の高血圧発症との関連を前向きに検討しました。

【結果】
震災後、避難者、非避難者ともに血圧が上昇し、収縮期血圧/拡張期血圧の変化量は避難者、非避難者それぞれ男性では+5.8/3.4 mmHgと+4.6/2.1 mmHg、女性では+4.4/2.8 mmHgと+4.1/1.7 mmHgであり、避難者の変化量が有意に大きくなっていました。また、男性では避難が高血圧発症のリスク上昇に有意に関連し、避難の高血圧発症に対する年齢調整ハザード比は1.24倍(95%信頼区間:1.11-1.39, p<0.001)でしたが、女性では有意な関連はみられませんでした。さらに、男性における避難と高血圧発症との関連は他に血圧に影響する因子である飲酒、喫煙、肥満度、ベースラインの血圧値、身体活動、運動習慣、睡眠、食習慣等を調整後も同様にみられ、多変量調整ハザード比は1.20倍((95%信頼区間:1.07-1.35, p=0.003)でした。

【結論】
以上の結果より、震災後、避難区域住民、特に避難住民において血圧の上昇がみられ、男性では震災後2年間の新規高血圧の発症に、避難したことが有意に関連することが明らかになりました。今後、避難区域では循環器疾患発症のリスクが高くなる可能性があり、地域ぐるみの対策が必要であると考えられます。