福島県県民健康調査甲状腺検査先行検査の結果について Results of the first-round thyroid examination of the Fukushima Health Management Survey

著者【筆頭著者、連絡・責任著者】
国立保健医療科学院 統括研究官:高橋秀人
掲載「保健医療科学」(2018)

福島県大熊町と双葉町にまたがる東京電力福島第一原子力発電所事故後、福島県「県民健康調査」(FHMS)がスタートしました。この調査は基本調査、甲状腺検査、健康診査、こころの健康度・生活習慣に関する調査、妊産婦に関する調査から構成されています。この論文では、放射線被ばくと甲状腺がんとの関連が存在するかどうかについての検討を簡単にまとめています。津田らの研究は県内の地域間比較(OR=2.6, 95%CI=0.99-7.0)と外的比較(IRR = 50, 95%CI= 25-90)を行い、関連性の存在をアピールしました。しかし地域間比較については大平らの研究で、(≧1% of 5mSv, <99% of 1mSv/y, and the other)なり客観的な3つの地域を用いて検討したところ、線量の最も高かった地域と低かった地域との比較で(OR=1.49 95%CI=0.36-6.23)を得ました。外的比較については、高橋らの研究は事故がない仮定のもとでいくつかの検査感度を用い、がんの進展モデルを使って、事故がない状況であれば116人の患者を検出しうることを示しました。片野田らの研究では累積罹患率の期待度数と観測度数の比30.8(95%CI: 26.2-35.9)と、累積死亡数が40歳以下で0.6であることから、甲状腺検診の過剰診断の可能性を示唆しています。これら3つの論文は放射線被ばくと甲状腺がんとの関連について否定的な結果を示しました。現在放射線被ばくと甲状腺がんとの関連について強い根拠はありませんが、関連の有無については今後も観測が必要です。