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妊産婦に関する調査
こころの健康度・生活習慣に関する調査


福島県県民健康調査「妊産婦に関する調査」の概説:放射線被ばくへの不安を抱える母親に焦点をあてて Overview of the pregnancy and birth survey section of the Fukushima Health Management Survey : Focus on mothersʼ anxieties about radioactive exposure

著者【筆頭著者、連絡・責任著者】
伊藤慎也1
【共同著者】
後藤あや2,3、石井佳世子3、太田操3,4、安村誠司1,3、藤森敬也3,5
放射線医学県民健康管理センター妊産婦調査室
1 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、2 福島県立医科大学総合科学教育研究センター、3 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、4 福島県立医科大学看護学部母性看護学・助産学部門、5 福島県立医科大学医学部産婦人科学講座
掲載「Journal of the National Institute of Public Health」(2018)
関連リンクhttps://www.niph.go.jp/journal/data/67-1/e67-1.html

【目的】
本研究の目的は (1) 福島県県民健康調査「妊産婦に関する調査」を総括すること (2) 放射線被ばくに伴う偏見・差別による不安を抱える母親の割合、および偏見・差別による不安の関連要因を明らかにすること (3) 新しく"Fukushima Future Parents Attitude Measure" (FPAM尺度)を作成して、将来の妊娠出産に対する態度を明らかにすること―の3点です。

【方法】
(1) 乳児および母親の健康状態を明らかにするために、福島県県民健康調査「妊産婦に関する調査」データを使用した11論文をまとめました。(2) 放射線被ばくに伴う偏見・差別による不安を分析するために、2011年の初回調査および2015年の追跡調査のデータを使用しました。2015年の追跡調査では、母親の主観的健康観、抑うつ症状、育児の自信、放射線被ばくに伴う偏見・差別による不安等を評価しました。(3) 福島県の女子大学の学生310名を対象に質問紙調査を行いました。

【結果】
(1) 福島県県民健康調査「妊産婦に関する調査」データの分析によりますと、福島原子力発電所事故は妊娠に対して有意な影響を与えていませんが、母親の精神的健康に有意な影響を与えていました。(2) 974名(41.2%)の母親が偏見・差別に伴う不安を感じていました。特に、母親の年齢、抑うつ症状の有無、予定通りの妊婦健診の受診、震災後の新たな病気・状態の有無が有意に偏見・差別に伴う不安と関連していました。(3) 探索的および確認的因子分析を行った結果、"caring for a baby"(育児に関する態度:3項目)と"giving birth to a baby"(出産に対する態度:3項目)の2因子が抽出されました。これらの2因子は生活の質、自己効力感、自尊感情と相関関係を示し、"giving birth to a baby"因子は放射線のリスク認知とも相関関係を示しました。

【結論】
福島県県民健康調査「妊産婦に関する調査」の論文の総括から、小さい子供を持つ母親への精神的健康支援が重要と考えられます。2015年の追跡調査より、母親の40%以上が放射線被ばくに伴う偏見・差別による不安を示していることが示されました。また、新しく作成したFPAM尺度によりますと、若い女性の将来の妊娠出産に対する態度は、放射線のリスク認知と関連していることが示唆されました。