からかい・いじめ被害に関する保護者認識:福島県県民健康調査の3年間追跡研究 Parental Recognition of Bullying and Associated Factors Among Children After the Fukushima Nuclear Disaster: A 3-Year Follow-Up Study From the Fukushima Health Management Survey

著者【筆頭著者、連絡・責任著者】
大江美佐里1
【共同著者】
前田正治2,3、大平哲也2,4、板垣俊太郎5、針金まゆみ2、鈴木友理子6
矢部博興5、安村誠司2,7、神谷研二2、大戸斉2
1 久留米大学医学部神経精神医学講座、2 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、3 福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座、4 福島県立医科大学医学部疫学講座、5 福島県立医科大学医学部神経精神医学講座、6 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所、7 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座
掲載「Frontiers in Psychiatry」(2019)

【背景】
この研究では、福島県県民健康調査の3年間での追跡調査結果を用いて、2011年の東京電力福島第一原発事故発災時に小学生だった児童について、からかい・いじめ被害に関する保護者認識について調査を行いました。

【方法】
調査の対象者は避難区域の発災当時小学校1年生から6年生までの児童で、3年間の調査(発災後1年後、2年後、3年後の3回)にすべて回答した2,626名でした。回答は保護者にお願いし、全体の90.1%で母親が回答しました。子どもの強さと困難さアンケート(SDQ質問紙)の25項目のうち「他の子から、いじめの対象にされたり、からかわれたりする」という質問を取り上げて「あてはまらない」、「まああてはまる」、「あてはまる」の3段階での回答を得ました。この回答と、属性や災害関連の因子との関係を調査しました。

【結果】
3回の調査のいずれにおいても、回答のほぼ80%が「あてはまらない」、15%が「まああてはまる」、5%が「あてはまる」に該当してしました。属性や災害関連の因子との単変量解析で、からかい・いじめ被害と有意に関連した項目は、2011年度は性別(男性で多い)、地震の体験(ありで多い)、津波の体験(ありで多い)、原発事故の体験(ありで多い)、災害の被害体験累積(数が多いほど多い)であり、2012年度は性別(男性で多い)、津波の体験(ありで多い)、災害の被害体験累積(数が多いほど多い)、2011年度の居住地(県外居住で多い)でしたが、2013年度は性別(男性で多い)のみでした。
一方、多変量解析では、からかい・いじめ被害と有意に関連した項目は、2011年度は性別(男性で多い)、原発事故の体験(ありで多い)でしたが、2012年度には関連する因子はなく、2013年度は性別(男性で多い)、年齢(年が若い方が多い)でした。多変量解析では、災害関連因の関与は2011年度のみ認められるという結果となりました。

【考察】
年月が経過するにつれて、災害関連の因子の関与が減少していく一方で、性別については3年間一貫して男性で多いという結果が認められました。今回の知見は今後の地域保健や学校保健の分野で生かされるのではないかと考えています。