よくあるご質問

妊産婦に関する調査の目的はなんですか?

東日本大震災以降、福島県内のご心配を抱えた妊産婦の皆様に対しまして、ご心配を軽減するための支援を提供すると同時に、福島県で子どもを産み育てようとする妊産婦の皆様の現状やご意見・ご要望を的確に把握し、妊産婦の皆様ご自身が次のお子様を儲けられたとき、さらには福島県内で新しくお母さんになられる方に、よりよい産科医療および母児支援を提供できるよう活かしていくことを目的に実施しております。

なぜ、流産や死産をした人にまで調査票が送られてくるのですか?

まず最初に、辛い御経験をお持ちの方にこの調査票が届きましたことで、ご本人様やご家族に御心痛をおかけいたしましたことに対しまして心からお詫び申し上げます。

東日本大震災後、多くの不安の声を耳にし、今もなお不安を抱えていらっしゃる方も多い中、微力ではございますが、妊産婦の方御自身やそのお子様の健康管理、ご心配ごとの軽減へのお手伝いをさせていただければと思い、本調査を行っております。

本調査は、福島県立医科大学が福島県の委託を受け、対象期間内に母子健康手帳が交付された皆様を対象としております。様々な妊娠経過をたどられた方々がいらっしゃることは承知しておりますが、全ての方々を対象とすることで、皆様の身体と心の健康を見守るとともに、皆様の状況を知ることにより、今後、少しでも安心して福島県で生活していただくために、福島県の母児支援体制の整備に繋げていくことができればと考えております。本調査に対して、何卒ご理解いただければ幸甚に存じます。

震災後生まれた子どもが心室中隔欠損症(VSD)でした。放射線の影響でしょうか?

先天性心疾患は100人に1人の確率で産まれてきます。先天性心疾患のうち心室中隔欠損症は、最も多く、約50%を占めています。また、すべての赤ちゃんの異常を含めると、生まれた時に100人に3人、5歳までに5人の異常がみつかると言われています。

放射線との関連については、先天性心疾患と放射線被ばくとの明らかな関連は証明されておりません。原発事故や核実験といった低線量被ばく(年間20mSvなど)からのデータには乏しく、主に医療被ばく(胃の透視やCTの検査などで1回に数mSvの比較的多い被ばく)との関連で調べられていることが多いと思います。

自然閉鎖の報告もございますし、現在の医療水準であれば、ほぼ間違いなく治療可能な病気ですので、安心して主治医の先生にお任せするのがよいと思います。

放射線の影響で二分脊椎裂、無脳児などが生まれるのでしょうか?

二分脊椎裂、無脳児といったいわゆる神経管開存症といった病気は日本では1500人に1人の確率で産まれてきます。また、すべての赤ちゃんの異常を含めると、生まれた時に100人に3人、5歳までに5人の異常がみつかると言われています。

放射線との関連ですが、神経管開存症と放射線被ばくとの関連は証明されておりますが、関連性が示されているのは200mSvを越えるようなたくさんの被ばくを、赤ちゃんの体ができるいわゆる器官形成期(妊娠16週未満)に浴びた場合といわれています。

原発事故や核実験といった低線量被ばく(年間20mSvなど)からのデータには乏しく、主に医療被ばく(胃の透視やCTの検査などで1回に数mSvの比較的多い被ばく)との関連で調べられていることが多いと思います。現在考えられるような、低線量放射線では胎児の神経管開存症は増加しないと考えられています。

現在は慢性的な低線量で心配ないといわれていますが、もし、「受精直後にたくさん被ばくする」のと「たくさん被ばくした卵子で妊娠する」のにリスクの差はあるのでしょうか

「受精直後に被ばくする」のと「被ばくした卵子で妊娠する」のも、受精後の胎児が正常に育っていくのであれば、どちらも問題ないと思われます。

受精卵への影響として、薬剤が良く知られていますが、放射線の影響も同じと考えられています。受精してから14日間(受精~18日間とする文献もあります)までは、投与された薬剤(あるいは放射線)は胎児に対して後に残るような影響を及ぼさないとされています。

胎児の器官が形成される以前の時期、つまり受精してから着床までのこの2週間は悉無期(しつむき)と呼ばれています。この時期は、その影響(放射線も同じ)があるとすれば着床できない(流産してしまう)けれども、着床後正常に発育していけば影響がなかったことを意味していて、後遺症がないということを意味しています。

この原則は受精前の卵子や精子にもあてはまると考えられています。さらに、現在のような放射線量で明らかに流産率が増加するなどといったことは知られておりません(薬剤や放射線などの影響がなくても、一般的に、全妊娠の10〜15%程度は流産してしまうといわれています)。

また、その後に正常に発育した胎児に対して、現在のような低線量の放射線が影響を与えるという明らかな事実は知られていません。器官形成期(妊娠16週未満)に100mSvを超えるようなたくさんの放射線被ばくを一度に受けた場合は、胎児異常のリスクは上昇するかもしれませんが、このような場合であっても必ず全員に影響がでるというわけではありません。

さらに、原爆被爆者のデータでは、被ばく2世(すなわち卵子に被ばくを受けた方)のご両親が100mSv以上の被ばく線量であったとしても、出産時の疾患から小児~成人期の発がんを含め、特に疾患の発症率の上昇を認めていません。

震災後生まれた子どもが甲状腺がんになるのではないかと心配です。

チェルノブイリの放射線事故で、現在まで明らかに発がんが増加した疾患は、子どもの甲状腺がんと言われていますが、これは、放射性ヨウ素の内部被ばくが原因と考えられています。物理的半減期から4月下旬以降は環境中から消失しています。しかも今回の原発事故によるほとんどの福島の子どもさんの甲状腺被ばく線量は、チェルノブイリとは全く違い、かなり低いと予想されています。

放射性物質の物理学的半減期

放射性物質 半減期(物理学的半減期)
セシウム137 30年月
セシウム134 2.1年
ヨウ素131 8日
カリウム40 13億年

しかしわずかでも甲状腺の被ばくを考え長期にフォローした方がいい子どもさんがおられる可能性を考え、現在、福島の子どもたちの甲状腺の検査が行われています。

胎児と甲状腺がんの発症率に関してのチェルノブイリの事故のデータでは、事故の時、胎児(お母さんのお腹の中にいた)だった子どもの甲状腺がん発症は2409人を調べてわずかに1人で、事故のとき既に生まれていた新生児の甲状腺がん発症率は31人/9720人(Shibata Yら. Lancet 2001年)で、単純に比較すると胎児の発症リスクは子どもの8分の1となり、胎児はお母さんにより守られていたと考えられています。

以上のデータはあくまでもあるレベル被ばくした場合の(例えば甲状腺の被ばく線量、臓器等価線量が数千mSvというチェルノブイリと比較したときの)リスクの話が中心です。福島県での一般住民の被ばく量はいままでお話してきたデータに出てくる数値よりさらに少ない量と考えられます。ご心配なさらなくて大丈夫と思います。

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福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター

〒960-1295 福島県福島市光が丘1番地

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