心臓血管病について知ろう

心臓血管病とは

私たちのからだは、脳、肺、肝臓、胆嚢(たんのう)、膵臓(すいぞう)、腎臓、消化管、ホルモン産生臓器(甲状腺、副腎、性器など)、耳鼻、眼など、さまざまなはたらきをもった臓器でできています。これらすべての臓器は、日々栄養分と酸素を必要としており、これらを運ぶのが血液です。生まれてから一生、心臓は一日10万回ポンプとして動き続けることで、全身に血管を通して血液を送り込んでいます。この心臓や血管の血液を送るはたらきが衰えた状態を心臓血管病といいます。心臓血管病にはさまざまなものがありますが、特に多いのは、狭心症・心筋梗塞(注1)、脳梗塞・脳出血(注2)、心不全、心房細動などです。

注1:冠動脈疾患、虚血性心疾患ともよばれる。

注2:脳卒中、脳血管疾患ともよばれる。

心臓血管病のおこる仕組み

上に述べた心臓血管病は、不適切な生活習慣と関連の深いことが知られています。過食・偏食(糖分や脂肪摂取の過剰、野菜不足など)、不活発な身体活動(運動不足)、睡眠不足、喫煙などの不適切な生活習慣は、高血圧、脂質異常症、肥満・メタボリックシンドローム、境界型・糖尿病などの生活習慣病につながり、心臓血管病をおこしやすくします(ただし、不適切な生活習慣が心臓血管病の原因のすべてではありません)。

不適切な生活習慣で心臓血管病がおこりやすくなる主な理由として、動脈硬化症があります(図1)。
血液を臓器に送り出す血管を動脈、臓器から戻る血管を静脈といいます。動脈は、3層構造になっていて(内側から外側に)血管内膜(血管内皮)、血管中膜(筋肉)、血管外膜と呼びます。血管内皮は、心臓から送り出される血液に反応して、その都度一酸化窒素(ガス)を分泌し、血管中膜にある筋肉にはたらき、血管を拡げたり縮めたりして全身の臓器に血液を運んでいます。
この血管内皮のはたらきは、図1Bで示すように不適切な生活習慣で悪くなりますが、この血管内皮障害が続くと、血管内皮の表面にお粥のような(粥状)柔らかい病変(プラークといいます)ができ、さらに時間が経つと血管全体が固くなります。この柔らかい部分や硬い部分を合わせて動脈硬化症と呼びます。これらが、心臓の血管でおこると狭心症・心筋梗塞になり、脳血管でおこると脳梗塞・脳出血がおこるわけです。動脈硬化症による心臓血管病の例を図1Aにあげます。


図1:動脈硬化症でおこる心臓血管病とその仕組み

心不全は「心臓が悪いために、息切れやむくみがおこり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」で、さまざまな心臓の病気の結果おこります。不適切な生活習慣の結果おこる狭心症・心筋梗塞でおこるものが多いですが、それ以外の心臓病でおこることもあります。心房細動は、動脈硬化症の影響は少なく、高血圧、加齢、肥満などにより心臓に負担がかかることでおこりやすくなります。

心臓血管病の予防法・治療法

これまで述べたように、さまざまな心臓血管病がありますが、これらは「予防可能な心臓血管病」と「遺伝など予防が難しい心臓血管病」があります。不適切な生活習慣でおこりやすくなる動脈硬化症による心臓血管病は、予防可能な心臓血管病(狭心症・心筋梗塞、脳梗塞・脳出血)の代表例です。図2に、東日本大震災後に増えた生活習慣病とその危険因子となった不適切な生活習慣をあげます(図中の↑で示しているもの)。


図2:「健康診査」生活習慣・震災関連等因子と生活習慣病の関連(40歳以上、男性10,120人、女性13,961人)

生活習慣病は、肥満症・メタボに関わるものと非肥満・やせに関わるものがあり、その組み合わせで、心臓血管病がおこってきます。それぞれの生活習慣病に対する予防は異なります。例えば、肥満症・メタボでおこる高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症、高血圧、境界型は、減量が予防に効果的です。

一方、非肥満・やせの方でみられる、高LDLコレステロール血症、高血圧、境界型、糖尿病は、減量は予防効果に乏しく薬が必要なことがほとんどです。まずは健診を受け、保健師、栄養士、かかりつけ医など地域の医療関係者に、エビデンス(科学的に証明された事実)にもとづいた正しい予防方法についてご相談ください(図3)。


図3:震災後に増加した生活習慣病 予防と治療のエビデンス

一度、心臓血管病がおこったあとは、生活習慣の改善に加えて、お薬や手術(非薬物療法といいます)が必要になるので、かかりつけ医に相談して、循環器内科、心臓血管外科、脳血管内科、脳外科などを紹介していただくとよいです。

2024年4月24日

島袋 充生
福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター 健康診査・健康増進室 室長
糖尿病内分泌代謝内科学講座 主任教授
ふくしま国際医療科学センター 健康増進センター長

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