1. 糖尿病ってなに?
血糖(血液中のブドウ糖)は、膵臓から分泌されるインスリンにより肝臓、骨格筋、脳や心臓などの細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。糖尿病はこのインスリン作用の不足により慢性的に高血糖となった状態です※1。
慢性的な高血糖は、2で述べるさまざまな合併症・併存症をおこします。
食事などで血糖が増えた時のからだの中
糖尿病ではない場合
・インスリンが正常に作用
→血液中のブドウ糖が正常
糖尿病の場合
インスリンの不足または正常に作用しない
→血液中のブドウ糖が上昇
糖尿病は二つの型に分けられます。
1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵臓の細胞が、ウィルス感染症などにより破壊・消失するために起こります。
2型糖尿病は、生活習慣の過食(高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレスなどにより、肝臓や骨格筋などでインスリンの効果が減るために起こります※2。
糖尿病は、空腹時や食後の血糖、2ヶ月間の平均血糖を反映するヘモグロビンA1c(HbA1c)という指標を用いて診断します。
県民健康調査「健康診査」の結果によれば、震災直後10.9%であった糖尿病は、震災から5年後16.0%まで増加していました※3。
図:糖尿病未治療・治療中の割合の推移
2型糖尿病の発症に影響した男女共通の生活習慣や震災関連要因は、加齢、肥満でした。
図:H23年度の生活習慣や震災関連要因等とその後の糖尿病発症との関連
※図中の↑は、糖尿病発症と関連していた要因を示します。
「ここから調査」と「健康診査」の結果によれば、精神的ストレスは特に男性で糖尿病発症を増やすことがわかりました※4。一方、日本食が多い食事パターンの方は、糖尿病発症が少ないこともわかりました※5。
糖尿病になりやすい数値
- HbA1c :
- 5.6%以上(NGSP値)
- 空腹時血糖 :
- 100mg/dL以上
- 随時血糖 :
- 140mg/dL以上
あてはまる方は、糖尿病発症と関連する要因がないか、生活習慣の見直しが必要か検討してみましょう。
参考文献等
1 糖尿病治療ガイド2022-2023、分光堂、東京
2 2型糖尿病の一部では、生活習慣と関係なくインスリン分泌が低下する場合があります。
3 県民健康調査「健康診査」対象市町村の7年間の推移(全体版) 第41回検討委員会資料3-1 県民健康調査「健康診査」結果まとめ(平成23年度~令和元年度)
4 Hirai H, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2022
5 Ma E, et al. Nutrients 2022
2. 糖尿病の合併症と併存症
糖尿病は、急性合併症と慢性合併症・併存症を起こすことがあります。
急性合併症には、著しい高血糖のためにおこる意識障害や感染症があります。(図)
慢性合併症は、主として高血糖が続くことでおこる合併症と、高血糖のみが原因ではないが、糖尿病患者に併存しやすい併存症があります。
慢性合併症・併存症には多くのものがありますが、特に問題になるものに、合併症の頭文字をとった、「しめじ」と「こがにはこ」があります。
「しめじ」とは、三大合併症ともいわれており、
しは、神経障害、
めは、網膜症、
じは、腎症です。
「こがにはこ」とは、
こは、梗塞(心筋梗塞、脳梗塞などの心臓血管病)、
がは、癌、
には、認知症、
はは、歯周病、
こは、骨粗しょう症です。
3. 糖尿病の治療の目標と治療の実際
糖尿病治療の目標は、糖尿病のない人と変わらない寿命と日常生活の質の実現です。このためには、糖尿病の合併症と併存症をおこさないこと、おこしても重症化させないことが重要になります。
そのためには、血糖、血圧、脂質の良好なコントロールと適正体重の維持、禁煙遵守が有効です。糖尿病の合併症と併存症をおこさないための治療は長期に十分に行う必要があり、食事、運動療法に加えて薬物療法の組み合わせが必要です。
健診を定期的に受けて、糖尿病の有無(血糖値やヘモグロビンA1c)を確認し、健診結果に異常(糖尿病)があれば、すみやかにかかりつけ医や病院に受診をしてください。
2023年1月19日
島袋 充生
福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター 健康診査・健康増進室 室長
糖尿病内分泌代謝内科学講座 主任教授
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