避難と生活習慣病

福島県「県民健康調査」の一つである健康診査は、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故により避難生活を余儀なくされた福島県民の方々について、生活環境の変化に伴う健康状態を把握し、生活習慣病の予防や疾病の早期発見、早期治療につなげていくことを目的としています。

生活習慣病は、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣がその発症・進行に関与する疾患群」と定義され(厚生省・公衆衛生審議会、1996年)、健康日本21では、「がん、心臓病、脳卒中、糖尿病等」を指しています。

健康診査では、震災直後から15年目の節目となる現在まで、生活習慣病が大きく増えたことがわかってきました。震災直後、肥満、高血圧症、脂質異常症、2型糖尿病、メタボリック症候群、肝胆道系酵素異常、高尿酸血症、多血症、心房細動が増加、その後、治療による高血圧症、脂質異常症の改善割合が増え、肝胆道系酵素異常が減る一方、2型糖尿病と慢性腎臓病の有病率が増加しています。

一般に、生活習慣病は、不適切な生活習慣(喫煙、不健康な食事、身体活動低下、大量飲酒、不適切な睡眠)が関わります。世界保健機関では、不適切な生活習慣の見えない部分にある「健康の社会的決定要因 social determinant of health」※1に注目すべきとし、「健康の社会的決定要因」として、地球規模化、都市化、大気汚染、貧困、教育問題、不平等、ストレス、差別をあげています。

健康診査を受けた方々では、生活習慣病の発症に、避難に伴う生活習慣の変化と精神的ストレスが大きく関わることがわかっています※2。県内あるいは県外に避難され、それぞれの場所で生活を続けられている方々、あるいは、帰還された方々は、少なからず、現在あるいは過去の避難による生活習慣の変化が健康に関わっていると想定されます。生活習慣病を予防し克服するには、ストレスを軽減し健康なこころの状態を保つこと、また、望ましい生活習慣を取り戻すことが大切です。


図:「健康診査」生活習慣・震災関連等因子と生活習慣病の関連(40歳以上、男性10,120人、女性13,961人)

参考文献等

1 WHO Europe Social determinant of health: the solid facts 2nd edition.
2 第41回「県民健康調査」検討委員会 資料3-1 県民健康調査「健康診査」結果まとめ(平成23年度~令和元年度)

2026年3月13日

島袋 充生
福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター 健康診査・健康増進室 室長
糖尿病内分泌代謝内科学講座 主任教授
ふくしま国際医療科学センター 健康増進センター長

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