フレイル・サルコペニア・ロコモってなに?
「フレイル」とは高齢期に心身の活力が低下することでストレスに対する抵抗力が弱まり、生活機能障害、要介護状態、死亡等の転機に陥りやすい状態です。虚弱と表現され健康と要介護状態の中間的な状態で、身体的、精神的、および社会的な側面があります。
「サルコペニア」は加齢により全身性の筋肉量の減少と筋力が低下した状態です。身体的な障害や生活の質の低下、および健康寿命の短縮などに関わります。
「ロコモティブシンドローム」は通称「ロコモ」と呼ばれ、運動器の障害により日常生活での自立度が低下し、要介護の状態や要介護の危険のある状態を指します。原因として加齢による筋量や筋力の低下、神経活動の低下に加えて骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、変形性脊椎症、変形性膝関節症などの運動器疾患が挙げられます。移動機能の低下が始まった状態のロコモ度1、移動機能の低下が進行した状態のロコモ度2、移動機能の低下が進行し社会参加に支障をきたしているロコモ度3に分類されます。ロコモは特に運動器の障害によって移動能力が低下した状態であり、ロコモが進行した状態(ロコモ度3)が身体的フレイルと言えます(図1)。
図1:ロコモと身体的フレイルの関係(イメージ図)
「サルコペニア」はそれ自体がフレイルと重なりますし、ロコモの原因となったり結果となったりします。すなわち3者は定義の差はありますが、重複する部分が多く、いずれも転倒の危険、日常生活の活動能力の低下、自立度の低下を伴って要介護状態の危険性が増します。これらの状態を予防すること、これらの状態になった場合でも早期に対策をとって改善することが、介護が必要な状態や将来の寝たきりを防ぐために重要です。この中でロコモは以下の簡便なチェック項目があり(図2)、ひとつでも当てはまる場合には、ロコモ予備軍として対策を早めにとることが勧められます。
図2:ロコチェック
フレイル・サルコペニア・ロコモって予防できるの?
「フレイル」・「サルコペニア」・「ロコモ」は予防できます。また一度これらの状態になってしまっても対策をとることで改善することができます。
予防に大事な点のひとつは健康維持です。「フレイル」や「サルコペニア」は加齢による能力の低下が一因ですが、病気やけがをすることで体力がおちたり、筋量が減少したりすることも原因となります。そのため、定期的に健康診断を受けて病気を予防したり早期に発見したりして治療することが大事です。また「ロコモ」は、骨粗鬆症、変形性脊椎症、および変形性膝関節症などの運動器疾患が原因となるので、これらを早めに治療して移動能力を低下させないことがロコモの予防につながります。
ふたつめは運動です。筋量減少の防止と歩行能力の維持には適度な運動習慣を持つことが勧められます。息が弾み汗をかく程度の運動を30分、週2回程度行いましょう。歩行が問題ないのであれば、早めのウォーキングが手軽で特別な器具がいらない運動として適しています。またラジオ体操や卓球など自分にあった運動習慣を取り入れることが大事です。日本整形外科学会ではロコモ予防にロコトレ1・2を提唱しています(図3,4)。
図3:ロコトレ1
図4:ロコトレ2
2023年7月12日
渡邉 和之
福島県立医科大学 附属病院 ふたば救急総合医療センター 准教授
整形外科学講座 准教授
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