肥満について詳しく知ろう

肥満ってなに?

肥満は、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態です※1。しかし、家庭や健診会場で脂肪の量を測ることは難しいため、身長に対する体重の割合である体格指数(BMIと呼びます)で肥満の有無を決めます。BMI 25以上が肥満と呼ばれます。

BMI(kg/㎡)=体重(キログラム)÷身長(メートル) ÷身長(メートル)

肥満は、日常生活において、身体活動量(歩数、運動量等)に比べて食事や間食で摂取するエネルギーの多い状態が続くことで起こります※2。中高年以降、年齢とともにエネルギーを消費する骨格筋の量や働きが落ちることも肥満の割合が増えるもう一つの原因とされます。

肥満のタイプ

肥満は二つのタイプに分類することができます。

皮下脂肪型肥満

「皮下脂肪型肥満」は皮下の脂肪組織に脂肪がたまるものです。比較的年齢の若い女性に多いとされます。

内臓脂肪

「内臓脂肪型肥満」は腸の周りの内臓組織に脂肪がたまるものです。
男性や中高年以降の女性に多いとされます。
また、中高年以降に増える、2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症・痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患や冠動脈疾患、脳梗塞の原因のひとつと考えられています。

参考文献等

1 肥満症診療ガイドライン2022
2 多くの肥満は主として生活習慣の変化が原因となる単純性肥満ですが、ホルモン等の異常でおこる二次性肥満もあります。

肥満による健康障害

日本肥満学会では、肥満が原因もしくは肥満に関連する健康障害として、11種類の疾患をあげています(表)。BMI25以上の肥満があり、これら健康障害のため医学的に減量が必要とされる場合、肥満症と呼ばれます。

                   
表 肥満症の診断に必要な11種類の健康障害
耐糖能障害(2型糖尿病を含む)
脂質異常症
高血圧
高尿酸血症・痛風
冠動脈疾患
脳梗塞・脳血栓症・一過性脳虚血発作
非アルコール性脂肪性肝疾患
月経異常・女性不妊
閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
10 運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節,変形性脊椎症)
11 肥満関連腎臓病

県民健康調査「健康診査」の結果によれば、震災後受診者の肥満の割合は、特に避難者で増加しました。避難者は男性では震災前32.8%から震災直後42.5%へ、女性は30.5%から35.9%に増加しました※3。非避難者は、男性では29.0%から31.9%、女性では27.4%から29.2%への増加にとどまりました。これらの原因として、避難にともなう生活習慣の変化(高カロリー食摂取の増加、身体活動量の低下等)や精神的ストレスによる過食などが想定されています※3。また、震災直後増加した肥満の割合は、その後も低下していないことがわかっています※4

男性の肥満の変化

女性の肥満の変化

図:震災前後での肥満の変化(Ohira T, et al. Asia Pac J Public Health 2017)
※割合(%)は、四捨五入の関係で小数点第一位の値が異なり、合計が100%とならない場合があります。

参考文献等

3 Ohira T, et al. Asia Pac J Public Health 2017
4 県民健康調査「健康診査」対象市町村の7 年間の推移(全体版) 第41回検討委員会資料3-1 県民健康調査「健康診査」結果まとめ(平成23年度~令和元年度)

肥満症の予防と治療

肥満症は、食事や運動習慣、生活習慣を適切に保つことでほとんど予防できます。

1つ目は食事です。1日3食、バランスのよい食事を適切な量、ゆっくりよく噛んで食べましょう。
2つ目は運動習慣です。週3回以上の定期的な運動がすすめられますが、日常生活の中で体を動かすことも効果的です。例えば、エスカレーターやエレベーターは使わず階段を使う、一日1000歩今よりも歩く、冬場でも踏み台昇降や縄跳び、ペダルこぎなどの室内運動をおこなう、座り続けず1時間毎に立って歩くなど、つづけられることを毎日すこしずつでも行うことがこつです。
3つ目は、肥満になりやすい生活習慣の改善です。ストレスをためない、ストレスを感じても食べ過ぎ、飲み過ぎにならない。夕食の時間を早めて夜食をとらない、飲酒量を控える、朝は早めに同じ時間に目を覚ます。睡眠時間を規則的にするなどで、夕食を減らし、朝食を増やすなどが、効果的です。

肥満症の治療は、以前は、標準体重を目指すとされていましたが、現在この考えは大きく変わっています。
特定健診等での解析により、肥満症では3%以上の減量で複数の健康障害が改善することがわかりました。

80kgであれば2.4kgの減量、50kgであれば1.5kgの減量で済むことになります。
※ただし高度肥満症(BMI 35以上)では現在の体重の5-10%減量が目標となります。

体重計イラスト

減量を目指すには、まず摂取エネルギーを減らす食事療法、エネルギーを使う運動療法が基本になります。食事療法は、一度に食べる量や食べる回数、食べる時間といった習慣を変える必要があり、定期的に身体活動を行う運動習慣を変えることも合わせて行動療法と呼ばれます。食事、運動、行動療法で減量目標が未達成の場合、薬物療法、外科療法の導入を考慮する場合もあります。

2022年12月27日

島袋 充生
福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター 健康診査・健康増進室 室長
糖尿病内分泌代謝内科学講座 主任教授

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