放射線ってなんだろう?

放射線とは?

線香花火に火をつけると、中心の火種は赤く燃えながら、周りにバチバチと火花を散らします。最初は勢いよく散っていた火花も、時間が経つと勢いが弱まり、最後に火は消えてしまいます。例えるなら火種が放射性物質、火花が放射線です。勢いが半分に弱まる時間を半減期と言います。

すべての物質は、目に見えない小さな「陽子・中性子・電子」の粒がそれぞれ何個かずつ集まってできています。これらの個数のバランスが悪いとその物質は不安定になり、これを放射性物質と呼びました。放射性物質は個数のバランスが悪く、安定になろうとして物質の外に「陽子・中性子・電子」自身やエネルギーを吐き出します。それが放射線です。

よく耳にする放射性ヨウ素や放射性セシウムも、環境中に事故前から存在するラドンや放射性カリウムなども放射性物質の一種です。原発事故によって周辺環境にばらまかれたのは、放射線ではなく放射性物質です。

その一方、私たちは原発事故があって初めて、放射線を浴びたわけではありません。宇宙から放射線が降り注いだり、地面や建物から放射線が発せられたり、空気や動植物に放射性物質が含まれています。

もともと放射線は私たちの周辺に存在しています。そのため、放射線による身体への影響は、そこに放射線があるかないか?ではなく、放射線がどれだけあるのか?私たちがどれだけ放射線を浴びたのか?という「量」が問題となります。


図:身の回りの放射線

放射線の健康影響

放射線を浴びることによる身体への影響は、その浴びた放射線の「量」がどの程度かによって異なります。自然界でも様々な場所にある放射線による身体への影響は、放射線があるかないか、ではなく、その「量」が重要となります。

どれくらいの放射線の量だと、どれくらいの健康への影響があるかについては、これまで広島・長崎での原子爆弾投下後に行われた調査の結果や、世界中の原発で作業されておられる方の情報や、自然界の放射線が多い地域に居住されておられる方の情報が参考にされてきました。

そのような様々な結果から、およそ100ミリシーベルト以上の被ばく「量」では、放射線を浴びれば浴びるほどがんによって命を落とす可能性が増してしまうことが確認されています。

もちろん、浴びれば必ずがんになる、ということでは全くありません。元々、我々10人のうちおよそ3人(約30%)は、がんによって寿命を迎えることが知られています。そこに100ミリシーベルトの放射線「量」を浴びてしまうと30%に加えて0.5%、200ミリシーベルトだとその倍の1%、400ミリシーベルトでさらにその倍の2%、がんによって命を落とす可能性が増すと推定されます。

その一方で、およそ100ミリシーベルト以下では、影響がはっきり見えなくなります。放射線とがんの研究結果も一貫性がなく、がん死亡が増えることを示す明確な証拠はありません。あったとしても肥満・喫煙・飲酒などの生活習慣の影響の方が大きいと考えられています。


図:低線量被ばくによるがん死亡リスク

2023年6月14日

坪倉 正治
福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター 健康診査・健康増進室 専門委員
放射線健康管理学講座 主任教授

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